アレルギー
勤務医時代からたくさんのアレルギー疾患の患児を治療してきました。近年、衛生環境 の改善、感染症の減少に反比例して増加傾向にあるのがアレルギー疾患です。軽症を含めますと3人に1人は何らかのアレルギー疾患を有しています。以下にそ れぞれの診断および治療の概略をお示しします。
気管支ぜんそく
幼児期に発症することが多いです。IgE抗体を作りやすいというアレルギー素因に加えて、ウィルス感染(風邪)などをきっかけに急激に発症します。呼吸が苦 しく、夜間も眠れず、顔色も不良となった状態を大発作と呼び、入院加療が必要となります。幼児では、初めての喘息発作が大発作となることもしばしばあり、 また夜間に悪化しやすいのが特徴で、ご両親の不安も強いものです。喘息発作の治療そのものはこの20年間ほとんど進歩しておりませんが、発作を予防する治 療は吸入ステロイドという薬の普及でずいぶんよくなりました。できるだけ大きな発作を起こさないようにコントロールすることで、乳幼児期の喘息は治癒する と考えます。年齢によって使用できる吸入器具に違いがあり、ネブライザーの購入などお子さまに適した治療法を選択する必要があります。小学校高学年や中学生で発症する喘息もしばしば経験します。これらも成人の喘息に移行しないよう良好にコントロールしていく必要があります。
アトピー性皮膚炎
乳幼児で特に有病率の高い、皮膚の炎症で湿疹様の病変が遷延します。炎症が慢性化し、掻破(かきむしり)を繰り返すことでさらに悪化し治りにくくなることが わかっています。アトピー素因という体質に由来するため短期間で治癒することは不可能です。うまくつきあっていくという気持ちが大切です。しかし炎症をし ずめ、皮膚の状態を良好にコントロールすることで乳幼児のアトピー性皮膚炎の多くは治癒していきます。現在のところ炎症をしずめる科学的に根拠のある治療 はステロイド軟こう、プロトピック軟こう(免疫抑制剤)の外用療法です。抗ヒスタミン剤の内服や保湿剤の外用も組み合わせて良好なコントロールを目指しま す。学童期や思春期、成人のアトピー性皮膚炎は難治でコントロールも難しいものです。先ほど述べた治療や漢方薬、紫外線療法なども取り入れてともに克服し て参りましょう。
食物アレルギー
食物の摂取によって、じんましんを始め、咳や喘鳴などの呼吸器症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状など不都合が生じる体質です。乳児期には何らかの食物アレル ギーを持つお子さまの割合は10人に1人にも及びます。鶏卵、小麦、牛乳が3大アレルゲンとして知られています。因果関係が明らかな場合は除去が必要です。しかし乳幼児の食物アレルギーの多くは就学時までに耐性化(食べれるようになること)します。しかし耐性化の時期には個人差があり、エビ・カニ・そ ば・ピーナッツなど耐性化しにくい食物もあります。漫然と食物除去が続けられることがないよう適切な時期に、食物経口負荷試験を考慮し、除去を解除してい きましょう。
アレルギー疾患は患者数も多く、マーケットも大きいため熱心に研究され日々進歩しています。アレルギー 学会での活動や、アレルギー専門医との意見交換を続け、常に治療法のアップデートをはかりたいと考えています。まだまだ治癒が困難な疾患ですが、ご両親、 おこさまと一緒に克服をめざして努力していきます。